新鋭短歌シリーズ 第3期がスタートします

 2013年5月にスタートした「新鋭短歌シリーズ」、第3期がスタートします。

 第3期もホームページをはじめ、書店などを通じて、広く参加者を募集し、50名以上の応募をいただきました。

 この公募からのメンバーに、監修者から推薦があったメンバーを加え、第3期12人のラインナップとしました。

 鮮烈に「今」を詠う新鋭の12人と出会い、新たな歌集発刊に向けて、準備が進められています。

 公募では、多くの未知の方達との出会いがありました。残念ながら今回のシリーズ参加がかなわなかった方達には、次の挑戦を期待したいと思います。

 また、このたび、監修者に、加藤治郎さん、東直子さんに加え、新たに江戸雪さん、石川美南さん、光森裕樹さんを迎えました。

 これからの新鋭短歌シリーズに、ご期待ください。

 

 

新鋭短歌シリーズ第3期 全12冊 ラインナップ

 

●2016年6月刊行予定
井上法子、虫武一俊、蒼井杏

●2016年9月刊行予定
鈴木晴香、中山俊一、杉谷麻衣

●2016年12月刊行予定
原田彩加、しんくわ、佐藤涼子

●2017年3月刊行予定
鈴木美紀子、尼崎 武、國森晴野

現代歌人シリーズコンベンションのご案内

2015年11月14日(土)、東京中野サンプラザにて現代歌人シリーズ著者によるイベント「現代歌人シリーズコンベンション」が開催されます。

【いまとここと現代短歌】書肆侃侃房現代歌人シリーズコンベンション

11月14日(土)
東京中野サンプラザ、研修室10
参加費:一般2000円 学生1800円
開場13:00
開演13:15~17:00
http://goo.gl/xLcFEI
※終了後の懇親会も予定しています
一般4500円 学生4000円

皆様のご応募、お待ちしております。

第66回 旅する一生を

白雲と旅する一生を夢見しか岬の果てに空高かりき

内藤 明『虚空の橋』

日々の営みは偉大で、生活には充実感が伴うが、やはり旅に出たくなる。(若手芸人だった猿岩石が「白い雲のように」を歌っていたのは、どれくらい前のことだっただろう)。岬の果てで見る空に、小さな自分が呑み込まれてしまいそうだ。内藤明は、私生活を巧みに短歌連作にする。『虚空の橋』をめくると、私小説を味わうときのような、しみじみとした思いにとらわれる。

千葉 聡

第65回 海のページ

海だけのページが卒業アルバムにあってそれからとじていません

伊舎堂いしゃどう ひとし『トントングラム』

期末テストが終わったら、休みが近づく! 梅雨があけたら、本当の夏がやって来る!(会社勤めのみなさんも、八月の夏の真ん中あたりにはお休みがとれますでしょうか)。「海に行きたいね」なんていう声を耳にすると、目の前の「やらなければならないこと」が一瞬ぼやけて見える。輝く海、うごめく波、いざなう白い砂浜。伊舎堂は、海を身近に感じながら少年期を過ごしたのだろう。海に心を寄せるときに、自分の深いところを覗きこむような気がするのは、なぜだろうか。

千葉 聡

第64回 時間をつくる

こゆびより小さきボタンを長く押し、こうしてきみは時間をつくる

野口あや子『かなしき玩具譚』

野口あや子は、恋愛のさまざまな場面を勢いよく詠む。まるで、スマホを手放さない十代の少女そのものだ。出来事が起きたその場でSNSに書き込みを始めるような雰囲気で、臨場感のある歌を差し出してくる。自分がどんな感情にとらわれても、それを恐れない。表現するために生きている人だ。掲出歌は、プライベートな時間をとるために携帯電話の電源を切る男を詠んだもの。こんな小さなボタンに操られてしまう自分に、はっとさせられる。

さて、この「ことばの冒険者たち」は、週に五回、平日に必ず更新してきましたが、筆者・千葉が、現代短歌アンソロジーの刊行準備に入りますため、7月末まで週に1~2回の更新となります。本当にすみません。9月ごろには、清新な現代短歌を多数収録した一冊をお届けできますよう、がんばります。どうかよろしくお願いします。

千葉 聡

第63回 なりたくない

なりたくないなりたくないと背泳に見上げるかみなり雲の蜂起を

飯田有子ありこ
『林檎貫通式』

飯田有子の第一歌集『林檎貫通式』には、まるで永遠に十代でいる宿命を負わされた少女のつぶやきのような歌が詰まっている。世の中の少女というものは、多くの試練を課せられる。我慢や礼儀を学べ。勉強して進路を見つけろ。そして必ず「大人になれ」と言われ、気がつけば大人になっている。だが、『林檎貫通式』の中に描かれた人たちは、大人になんかならずに、自分の思いを全開にして生きていく。なんて乱暴で愛しい世界だろう。

千葉 聡

第62回 小説の一行に

ふと雨の街へ踏み出す 小説のなかの小さな一行になる

深見あす香
「早稲田短歌44号」

雨の街に出て行く私。「ふと」出かけるのだから、約束のない気ままな時なのだろう。まっすぐに降ってくる雨も、顔をあげて歩く私も、小説の一行みたいだ。そう考えると、雨の降る街全体は、一冊の大きな本なのかもしれない。どうせなるなら、長編小説の中の、きらりと光る一行になりたい。「早稲田短歌」には、新作短歌、一首評、本格的な歌論が載っている。短歌総合誌のように読みごたえがある。

千葉 聡

第61回 戦争に失ったもの

戦争に失ひしもののひとつにてリボンの長き麦藁帽子

尾崎左永子さえこ
『さるびあ街』

このところ、政治のニュースを耳にするたび、戦争に向けてじわりじわりと進んでいくような怖さを感じる。一教員としては、ただ単純に、教え子を戦場に行かせたくない。強く、そう思う。掲出歌は、強大な戦争に対して、小さな麦藁帽子を提示する。小さいが、この帽子には、夏の午後のきらめきや、体温の感じられる日々への愛着がこめられている。この第一歌集刊行時、尾崎左永子はまだ「松田さえこ」だった。

千葉 聡