新鋭短歌

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一首評

あるときは行方しれずの思慕に似て一般均衡理論 たそがれ

堀合昇平 2013.08.20

一首評

「一般均衡理論」とはどんな理論なのだろう。「理論」と名がつくのだから、それは何かを数字で表したり、分析したり、世の中の現象をうまく説明するものなのだろう。だとすれば、「理論」は「思慕」とはもっとも遠いところにあるものだ。しかも「行方知れず」なのだ。そんな不確かなものに似ているとは。一日の終わるまぎわ、薄暗くなる時間帯に、数字を追及して働く人の胸のうちに湧き起こるゆらぎがある。人はやはり機械ではないのだ、と。

嶋田さくらこ

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