新鋭短歌

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水野葵以

上坂あゆ美

toron*

一首評

皿の隅ポテトサラダはひっそりと春の一部となりて動かず

鯨井可菜子 2013.08.26

一首評

ポテトサラダが好きだ。味も好きだが他人の家のそれをご馳走になるときがたまらない。ソースをかける家、醤油をかける家。刻み玉葱をいれる家、コーンをいれる家。家族の味覚の集積がそこにあり、他人の本棚を覗くように楽しい。ポテトサラダが春の一部であるという比喩。光のイメージだ。ディッシャーで掬った丸みを帯びた物体。朝日の差し込む食卓で、仄かに湿り、ひっそりと発光している。それは家族の在り方の象徴でもあるのだろう。手触りのあるスケッチに、僕はすっかりご馳走になってしまったのだった。

堀合昇平

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