新鋭短歌

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水野葵以

上坂あゆ美

toron*

一首評

風の尾を摑みそこねてしまふのは私が風であるからだらう

笹井宏之 2013.08.22

一首評

風には尾があるという。その尾を摑もうとするが摑めない。私自身が実体のない風なのだから。
――<異化×異化>ふたつの異化が鮮やかな一首である。
森羅万象にあたたかなまなざしを向け、ささやかな存在に命を与える<異化>、
そして作者自身が人ならぬ存在に変化するという<異化>。

そこはかとない“風”という存在に自らを重ねる作者のやさしさに、
わたしの胸の奥処がきゅっと切ない音を立てるのである。

天道なお

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