冬の朝。結晶した蜂蜜を陽光に透かしつつ瓶の出口へと誘う。蜂蜜はその濁った全体をゆっくりと動かし始める。硝子の器へ、あるいは直接パンへ注がれるまでの間を作者はよろこびとして感受する。この「よろこび」の言葉の響きに主情的な重みはない。ただ眺めているのであり、感情はうっすらと全体を包んでいるだけだ。季節のめぐりを、それを構成する仔細な現象を、自身もその一部であるかのように、疑いもなく受け入れている。カップ麺が煮えるまでの三分間が待てない世の中である。冷えた大気に体を縮ませるのは人間に限ったことではないよ。木も土も蜂蜜だって凍えるのだから慌てないで、と諭されているようで立ち止まってしまった。
堀合昇平