新鋭短歌

新鋭短歌シリーズスタート

水野葵以

上坂あゆ美

toron*

一首評

いちばんの自分の敵は自分だしあなたは敵というか、素敵だ

田中ましろ 2013.11.06

一首評

会議の終了直後を想像した。懸案だった企画がやはり通らなかった。散会し各々が持ち場に戻っていく中で、同僚(女性)が近づいてくる。早速、立て直し策を練ろうというのだ。あれこれポジティブに策をめぐらす彼女の声は、しかし男には届いていない。自らのプレゼンテーションの場面を思い出し、「あそこの詰めが甘かったか・・・」と自問自答しているのだ。うわのそらの問答にいらいらを募らせて、彼女はやがて爆発する。なぜ私の意見を訊いてくれないのだ? なにか気に入らない点があるのか? そもそもわたしのことが嫌いなのか?次第に感情的になる彼女の声に我に返り、改めて彼女をみる。痩せた爪。肌の陰り。徹夜明けの疲労は補いようがない。疲労困憊でありながら、必死で問い詰めてくる姿に仕事上の関係など超越した神々しさすら感じてしまうのだ。現代の職場においてありがちな男女の思考のすれ違いをポップにあぶりだす視点に頷きつつ、爆笑した。

堀合昇平

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