原田彩加 2017.02.27
夢で長く生きてしまった明け方に目覚めたときのとおい心音 2017.02.22
薔薇の棘わたしの手から生えていて今日庭園は閉ざされて在り 2017.02.17
滅びない身体でどこまでゆくだろう波間に浮かぶスーパーボール 2017.02.14
高知では知らんひとともよう喋る日曜市の日除けのしたで 2017.02.09
振り返る/振り返らない 明け方の夢に聞こえる自転車のベル 2017.02.06
きれぎれに明るい歌が聴こえくる ユートピア、ってどこにあるのか 2017.02.01
スカートがくらげみたいに膨らんで水の匂いの地下鉄が来る 2017.01.29
口数が少なくなってゆく秋のつめたい水に沈むお茶碗 2017.01.25
黙しつつ歩めば君は草原のきりんのようで月が美し 2017.01.20
穏やかな海に向かって手をつなぐ 水平線が壊れぬように 2017.01.17
ヘンゼルとグレーテルが振り向けば街 等間隔に光る信号 2017.01.12
捩花のちいさな螺旋 消息をたずねてみたいおさなともだち 2016.12.29
テーブルのうえはまぶしい曇り空ひとりの朝に皿を並べる 2016.12.26
眠る間にすべてを忘れますように 百合の香りがしている廊下 2016.12.20
透けながら眼前に立つ木蓮のいいえ謝る必要はない 2016.12.15
行列がなくなり水が腐っても撤去されない黄色いボート 2016.12.12
広島の従妹と散歩した夜の(月のひかりも日焼けするんよ) 2016.12.07
スプーンを水切りかごへ投げる音ひびき続ける夜のファミレス 2016.12.06
好きだったひとを忘れて新緑の世界ようやく胸に迫りぬ 2016.01.06
はらだ・さいか / 1980年高知県生まれ。横浜在住。
昭和女子大学短期大学部在学中に短歌と出会う。
2000年度朝日歌壇賞(佐佐木幸綱選)受賞。
2011年、NHK文化センター青山教室にて東直子講座を受講。
2014年、現代歌人協会主催「第43回全国短歌大会」朝日新聞社賞受賞。
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