さよならだ　体が軽くなっていく月を横切る旅客機を追え 2021.05.19

やさしさの使い道なら知っている涙をぬぐう指先の向き 2021.05.16

故郷という名前の景色に変わるのか防風林の続く平原 2021.05.13

湖は風のかたちを映し出すきみが漕いでいるカヌーが横切る 2021.05.10

目のわるい世界の文字は色つきのひかりにみちてほぼ読めないが 2021.05.07

雨を見出す　君の背中をさするとき音やゆっくり湿りだす目に 2021.05.04

窓際の陽射しを浴びる耳かきの曲がったところからするにおい 2021.05.01

きみがかつて見ていたという風景を味わいたくて雪を頰張る 2021.04.28

ビル風で罵れよ秋　取り留めのない話題なら持っているんだ 2021.04.25

ちゃらんぽらんって身体から鳴る生きものになった気もするけど 2021.04.22

怒りが混ざる声に振り向く人たちへ最終電車は光りつつくる 2021.04.19

吉田さん来てないけれど元気かな無邪気なくせ毛に悩んでないかな 2021.04.16

とてもしぬ世界はきっとゆらめいてきれいな食事ばかりがならぶ 2021.04.13

ドライヤーし終えた匂い脱衣所の記憶となって塗り替わるのか 2021.04.10

風が吹くたびに靡いている髪が影にあらわれ追うように行け 2021.04.07

旅客機に乗る人たちに出会いとか別れが荷物のように並んで 2021.04.04

国道に捨てたらいずれ粉々のライターだろう風を知るだろう 2021.04.01

野に放つ　いずれ戻って来るまでの犬の姿は指で隠せる 2021.03.29

朝焼けに体を預けてゆくときのカーテンレールのにぎやかな声 2021.03.26