井上法子 2016.08.30
雪の舟とけてこれから花の模写 始まらないから終われなかった 2016.08.25
冬の影 わたしのあとで肯いてきみが革命を語ればいいさ 2016.08.19
地続きのほのあかるさよ にんげんの飽きっぽささえこんなに光る 2016.08.16
ふいに雨 そう、運命はつまずいて、翡翠のようにかみさまはひとり 2016.08.09
白布。こころのたまり場になる白書。でも破れそうなら歴史をあげる 2016.08.04
〈おかえり〉がすき 待たされて金色のとおい即位に目をつむるのさ 2016.08.01
日々は泡 記憶はなつかしい炉にくべる薪 愛はたくさんの火 2016.07.27
煮えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火 2016.07.22
逆鱗にふれる おまえのうろこならこわがらずとも触れていたいよ 2016.07.19
すぐ溶けるくらげのために夜を敷きこどものままでそこに居たこと 2016.07.13
期待されてつらかったね蕾 泣かないように春雷を蒔く 2016.07.08
よくねむる病気になってさみしくて睦月おかえりなさい。花野へ 2016.07.05
どんなにか疲れただろうたましいを支えつづけてその観覧車 2016.06.30
葉月尽いとしいひととふるさとと青には青の挨拶がある 2016.06.27
月を洗えば月のにおいにさいなまれ夏のすべての雨うつくしい 2016.06.22
透明なせかいのまなこ疲れたら芽をつみなさい わたしのでいい 2016.06.17
ぼくを呼んでごらんよ花の、
紺青のせかいの夢を翔けぬけるかわせみがゆめよりも青くて 2016.06.09
ひかりひとつ奏で終えても(ほら ふるえ)にんげんは詩のちいさな
いのうえ・のりこ / 1990年7月生まれ
福島県いわき市出身
明治大学文学部卒業
立教大学大学院修士課程修了
東京大学大学院博士課程在学中
2009年 早稲田短歌会入会
2013年 第56回短歌研究新人賞次席
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