岸原さや 2013.12.01
家かしら、ここ。部屋のまま、漂流してる。梨とわたしと子猫をのせて 2013.11.28
グララアガア、グララアガアと叫びたい残業仲間とわける板チョコ 2013.11.25
ああ、だからここにおります廃駅のまばゆいひかりに溶けだしながら 2013.11.22
僕たちは生きる、わらう、たべる、ねむる、へんにあかるい共同墓地で 2013.11.19
波音がやまないのです朝も昼もふつうの顔をつけているのに 2013.11.16
耳につよく受話器をあてる震災のきみのいのちにつながりたくて 2013.11.13
オルガンの和音をさがすでたらめな幼いゆびを母は咎めず 2013.11.10
あたたかいまだあたたかいから耳の奥へ声さし入れる、おかあさん 2013.11.07
ぶらんこの曲がった鎖ガチャガチャと直してすわる秋のまんなか 2013.11.04
うっすらとあなたの影をしりぞける琉球硝子の水差しの青 2013.10.27
こんなにもしずかな指でひらくなら手紙の文字はさらさらの砂 2013.10.24
えらぶことえらべないこと蛇口から出る温水をうける手のひら 2013.10.21
ざりがにの眠りを見たの横むきに浮いて眠るの深夜の水槽 2013.10.18
噴水のつぶつぶのようわたしたち落ちてふたたび噴きあがるみず 2013.10.15
遠い夏くすりの糖衣なめました 苦いところにとどくすれすれ 2013.10.15
羽をもつひとと静かな声をもつひとが出会える街路樹だった 2013.10.15
ふみふみと泣く子の夢を今日も見たふみふみとただふみふみと泣く 2013.10.15
かなしみがかなしくなくてくるしみもくるしくなくて熱だけのある 2013.10.15
きしはら・さや
静岡県三島市に生まれる。
早稲田大学教育学部国語国文科卒。以後東京に在住。
2006年、短歌をつくりはじめる。
2007年、未来短歌会に入会。加藤治郎に師事。
ブログ「さやかな岸辺」
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