鯨井可菜子 2013.07.25
行きたくないと震えるこころ水ぎわに千鳥格子の鳥を放てば 2013.07.22
抱擁のひとつひとつは輪郭をうしない
しのぶれど色に出でにけるわたくしと飲む焼酎はおいしいですか 2013.07.12
朝の駅 人は群れなし大きなるカスタネットの中を歩めり 2013.07.09
真っ直ぐにさみしさはあり小糠雨の向こうに延びる誘導ブロック 2013.07.04
わたしには無理なんですと雨上がりにぐっしょり濡れた日傘ひらいて 2013.07.01
水色の栞を強くたなびかせ特急列車すぎしのち、風 2013.06.26
今日食せしもの唯一の緑なる小松菜そうだがんばれ小松菜 2013.06.21
わたしたちを隔てる皿にさやさやとパルメジャーノの雪は降りつむ 2013.06.18
「信念をつらぬく」というタイトルの本逆さなり母の本棚 2013.06.13
朝靄の色に名付ける由なくてわれら〈もやもや団〉と称せり 2013.06.10
解説のハセガワさんは目の前のマイクの網目が気になっている 2013.06.05
餃子の皮二枚あわせて弟のつくるUFOみっしりと肉 2013.05.31
同棲をしたいと切り出す妹の納豆の糸光る食卓 2013.05.28
風光る夏の画塾よ弟がスケッチブックを見せてくれない 2013.05.22
さよならって言おうとしたら足許にきれいな刺繡糸があったの 2013.05.22
阿佐ヶ谷の画家の家にて昼下がりファム・ファタールが茹でるそうめん 2013.05.22
ビスケット託して放つ伝書鳩その密告は食べても構わん 2013.05.22
北風に襟をたてつつ横顔の君はわたしのことで泣かない 2013.05.22
くじらい かなこ / 1984年4月生まれ。
福岡県立筑紫丘高校、九州大学芸術工学部卒。デザイン会社勤務を経て、現在フリーランスの編集者・ライター。「かばん」「星座」に所属。
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