國森晴野 2017.06.12
楽隊は行ってしまった きんいろの拍手のなかを裸足であるく 2017.06.07
風向きをたしかめる手はおおきくて求めることは悼むことです 2017.06.02
さかさまに雲をながめる来世でも選んでくれたビールを飲むね 2017.05.30
ピクルスをざくりと嚙めばさらさらと天気雨です遠く在るひと 2017.05.25
終わらせたこころをひとつD列の鳥卵標本箱におさめる 2017.05.17
海でなく街のしずくを連れてきた半透明のきみを拭きとる 2017.05.12
染みついた記憶は混ざりあってゆく回転ドラムに眠るぬけがら 2017.05.09
深くふかく封じたひとの熱量を語ることなく在る鉄の町 2017.05.09
五分だけ遅れたひとの抱擁に冬のにおいを確かめる夜 2017.05.01
切りすぎた前髪のまま追いかけるわたしは雨のはじまりに立つ 2017.04.26
手芸ならすこし好きですばらばらのあなたの指を繕う岸辺 2017.04.21
左手のレモン牛乳なまぬるく渡り廊下の先は知らない 2017.04.18
青空にひろがる銅のあみだくじ君の窓まで声が繋がる 2017.04.13
うすがみに包まれているはつなつをひらいて僕らは港へ向かう 2017.04.10
たたみ忘れた翼のように持ったままわたしは傘と線路を渡る 2017.04.05
生きているように手帳の空白を埋める研修/培養/会議 2017.03.31
コロニーと呼べばいとしい移民たち生まれた星を数える真昼 2017.03.28
無いものは無いとせかいに言うために指はしずかに培地を注ぐ 2017.03.23
鈍色のきりんの群れが鉄を食む足元をゆく工場の朝 2017.03.16
くにもり・はれの / 栃木県出身。東北大学大学院工学研究科土木工学専攻修了。
2010年よりNHK文化センター青山教室にて東直子講座を受講し、短歌をはじめる。
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