中畑智江 2014.11.19
影失い針を失い時間まで失い日時計 忘却に
しんしんとゆめがうつつを越ゆるころしずかな叫びとして銀河あり 2014.11.11
寛容な空にすべてを吐き出して咲けひまわりはひまわりのまま 2014.11.06
おしまい。と夕ぐれが云う窓が云うアイロン台の脚を折るとき 2014.10.31
卓上に鍵を並べる 夕ぐれの鍵はそれぞれ疲れていたり 2014.10.28
細長き部屋を斜めに横切ればどこにも属さぬ椅子にぶつかる 2014.10.23
咲きそうで咲かざる梅を仰ぎつつ父の握力思い出したり 2014.10.20
ぱっこんと笑い飛ばしたかのようにペットボトルの凹みは戻る 2014.10.15
限りなきひかり寄り添うボトルには水の期限が記されており 2014.10.09
逆回転しているメリーゴーランドみたいな不安いつも抱えて 2014.10.06
空っぽの私の中に入りこむ魔が射すときの魔のような月 2014.10.01
ゆがむ虹みたいに立てる少女らの空はいつまで水色だろう 2014.09.26
ゆく扉くる扉ありて人生の長い廊下にドングリの落つ 2014.09.22
全身にくまなく舟をめぐらせて
数えられないもの数多あふれたるこの世それらを数えるこの世 2014.09.11
南国の木の実でできたお茶碗がわたしの離島のように在る午後 2014.09.11
表札にとんぼ止まれば照りつつもこの家の姓に影を落とせり 2014.09.11
レタスからレタス生まれているような心地で剝がす朝のレタスを 2014.09.11
まだ青きトマトの皮をむくような衣更えする初夏の雨ふり 2014.09.09
なかはた・ともえ
1971年生まれ 愛知県蒲郡市出身/在住
1994年 南山大学 文学部英語学英文学科卒
1996年 短歌を作り始める
2008年 中部短歌会に入会
2009年~2012年
中部短歌会新人賞受賞
第21回・第23回 歌壇賞候補
第28回 現代短歌評論賞候補
第57回・第58回 角川短歌賞佳作
2012 年 第五回中城ふみ子賞受賞
ラインナップ