小野田光 2019.03.01
そういうのずっと濾過してきたんだねピエロが鼻を泉にひたす 2019.02.26
国境を解かれた陸の果てに舞う百年のちの手旗信号 2019.02.21
喉奥は生ぬるい沼 この夏の解をもたない人と歩めば 2019.02.18
間違えた靴のままゆく舗装路が海になっても終わらない夢 2019.02.13
粉雪をふくみ唇かがやかす君の余罪を数えてやまず 2019.02.08
ローム層にしずかな記憶抱く街で八万台の複写機光る 2019.02.05
君が昨日指を浸していた水を加湿器で霧状にしてゆく 2019.01.24
口の中切れるまで飴舐めつづけ会いにゆかない日曜の午後 2019.01.21
右中間を球はころがる耳寝かせ森に分け入るうさぎのように 2019.01.16
彼は背が高くて眼鏡をかけていてイルカの置き物ばかり集めた 2019.01.11
火星にもなにかの卵と粉がありふんわりさせる策がみつかる 2019.01.08
完璧なしゃぼん玉もうさようなら姉のブラウス私に似合う 2019.01.03
ひき際が綺麗でしたね花束はどこかで燃えて香りを放つ 2018.12.31
床に散るポップコーンを片づける銀幕だけの空爆ののち 2018.12.26
青空は不平等だと知っている南のアイスホッケー選手 2018.12.21
つめたさのない夏なんてあるものか さよならの著作権はぼくのだ 2018.12.18
打ち水はひと掬いずつ煌めいて ゆめは、ひとりで、みるもの、でしょう 2018.12.13
君は鳥になっても信号待ちをする枇杷の実ほどの自信を抱いて 2018.12.10
金太郎飴の断面ひしゃげてる断ち切って断ち切って過去たち 2018.12.05
おのだ・ひかる
1974年、東京都生まれ。「かばん」会員。
2018年、「ホッケーと和紙」により第64回角川短歌賞佳作。フォトグラファーとして、主に人物肖像、スポーツ写真などを撮影。
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