笹川諒 2021.05.21
パラフィン紙分けあうように冬を待つこころに敵を置かない人と 2021.05.18
世界が終わる夢から覚めて見にゆこう鹿の骨から彫った桜を 2021.05.15
本当に誰ひとりいない草原を自分の部屋みたいに歩きたい 2021.05.12
後頭部に扉が増えてゆくような気がする漆器のにおいを嗅げば 2021.05.09
物語はいつも大きく目に見えず喪服といえば喪服の少女 2021.05.06
無題という題がどれだけうつくしいことかを伝えたくて会いにゆく 2021.05.03
夏よ 呼びかけても返る言葉なく夏の朝には祠が似合う 2021.04.30
でも日々は相場を知らない露天商みたいな横顔をふと見せる 2021.04.27
硝子が森に還れないことさびしくてあなたの敬語の語尾がゆらぐよ 2021.04.24
僕よりも俯きがちにしらしらと
強弱に分けるとすれば二人とも弱なのだろう ピオーネを剝く 2021.04.18
しんとしたドアをこころに、その中に見知らぬ旗と少年を置く 2021.04.15
言いよどむとは透けること完全な涙のような裸木に触れる 2021.04.12
こころを面会謝絶の馬が駆け抜けてたちまち暮れてゆく冬の街 2021.04.09
あなたよりあなたに近くいたいとき手に取ってみる石のいくつか 2021.04.06
本当のさびしさだけが犬になる花野を少なくとも知ってるね 2021.04.03
僕たちの寿命を超えて射すひかりの中で調弦されてリュートは 2021.03.31
手は遠さ 水にも蕊があると言うあなたをひどく静かに呼んだ 2021.03.28
椅子に深く、この世に浅く腰かける 何かこぼれる感じがあって 2021.03.25
ささがわ・りょう
長崎県諫早市出身、京都府在住。
大阪大学文学部卒業。
2014年より「短歌人」所属。「ぱんたれい」同人。
第19回髙瀬賞受賞。
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