佐藤涼子 2017.03.01
時が解決するという噓 逆さまのスノードームに雪を降らせる 2017.02.24
凍蝶の羽が崩れる 生き返りそうな気がした夜明けの浜辺 2017.02.21
一切は空の空だと知っている 生き残されてしまった世界 2017.02.16
打ち明けられた恋の話を思い出す 白菊手向ける祭壇の前 2017.02.13
震度7母が我が子を抱くように職場の床でパソコンを抱く 2017.02.08
エンジニアブーツの重さでとどまったこの世に雨の歌口ずさむ 2017.02.03
ガリラヤのイエスのようにボーカルは観客達の頭上を歩む 2017.01.31
海までのフルスロットル 決めないという三つ目の選択のため 2017.01.27
猫背の男、好きかも レモンイエローのサンダルを手に越えるせせらぎ 2017.01.24
頬で聞く心臓の音やわらかく今夜の雨はきっと止まない 2017.01.19
「サラブレッドに乗りませんか」とアナウンス流れる春の夕べのバスに 2017.01.16
しゃぼん玉ぽろぽろ吹けば寂しくて多分産まないまま死ぬだろう 2017.01.11
眠ったら明日になってしまうからベッドで夜を見つめ続けた 2017.01.05
川沿いに歩き続けて夕月夜ふわり迷子になるための旅 2016.12.28
「今後ともお願いします」とお辞儀する 来世は草木になると決めつつ 2016.12.22
飲み干した酸味ばかりの珈琲の澱のかたちで明日を占う 2016.12.19
ふわふわと卵スープをかきまぜて歌詞でたらめに歌うボサノバ 2016.12.14
ドーナツで丸く切り取る夏の空この先ずっと寄り道でいい 2016.12.09
片翼で飛べるだろうか 春雲が広がるばかりのビルの屋上 2016.12.06
さとう・りょうこ / 宮城県仙台市在住。
2012年、塔短歌会入会。
2014年、塔新人賞受賞。
ラインナップ