ユキノ進 2018.06.22
廃坑の錫鉱山の坑道からわたしの胸へつながる道よ 2018.06.19
骨になるまでのひととき薄紅の花の名前を教えてもらう 2018.06.14
四年間で十二万キロ走破した営業車とおれのはるかな旅路 2018.06.11
それはもう愛だよ、愛とか言いながらお湯割りの梅をぐずぐず崩す 2018.06.07
一列の水門が容赦なく落ちて川の首もとざっくりと断つ 2018.06.04
「トリプルルッツ」残業に飽きくるくると回るまよなか部長の椅子で 2018.05.30
外国の地下鉄に乗っているときの表情をして会議を過ごす 2018.05.25
吹く風のゆくえも知らずサイゼリヤでパソコンを開く
誰かの手を離れる風船 世界から失われゆくひとつのかたち 2018.05.17
「派遣でもできる仕事」と会議中屈託もなく話す同僚 2018.05.14
残業の一万行のエクセルよ、雪原とおく行く犬橇よ 2018.05.09
支店長ナイスショットと言いながら空を横切る鳥を見ていた 2018.05.02
海図にない島が見つかり朝焼けの波濤を越える海鳥の群れ 2018.04.26
すまないねサイドカーには犬を乗せるきみは電車で来てくれないか 2018.04.23
ショートケーキの尖った方を北へ向け「出航だ」って真顔できみは 2018.04.18
新宿の夜道に落ちたネクタイのずっと踏まれている小花柄 2018.04.13
午後ずっと猫がふざけて引きずった魚のまなこが見上げる世界 2018.04.10
船乗りになりたかったな。コピー機が灯台のようにひかりを送る 2018.04.06
ゆきの・すすむ / 歌人、会社員、草野球選手。
1967年生 福岡県出身。
九州大学文学部フランス文学科卒業。
2014年、第25回歌壇賞次席。
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