朝の風景。保育園に子を預け職場へと向かう。途中、談笑している母親たちと目が合うが、それに加わる時間はなく、曖昧にやり過ごし道を急ぐのだ。バブル経済の崩壊を経て、「失われた〇〇年」の更新が続く現在、若い女性にとって専業主婦が憧れの「地位」になっているという。しかし作者はワーキング・マザーの道をゆくのである。子育ての質の向上と経済的自立(あるいは貢献)という恐怖心にも似た目標の達成に向けてまい進する。だが現実は厳しい。半透明とは二律背反的な「あるべき姿」に苛まされる自身の体感だろう。今日もまた、専業主婦のママ達の妙にすっきりした微笑を、羨望と嘲りをもって吹っ切り急ぐのだ。
堀合昇平