新鋭短歌

新鋭短歌シリーズスタート

水野葵以

上坂あゆ美

toron*

一首評

ひとむれのママ達の笑みかわしつつ半透明のわれが道行く

天道なお 2013.08.28

一首評

朝の風景。保育園に子を預け職場へと向かう。途中、談笑している母親たちと目が合うが、それに加わる時間はなく、曖昧にやり過ごし道を急ぐのだ。バブル経済の崩壊を経て、「失われた〇〇年」の更新が続く現在、若い女性にとって専業主婦が憧れの「地位」になっているという。しかし作者はワーキング・マザーの道をゆくのである。子育ての質の向上と経済的自立(あるいは貢献)という恐怖心にも似た目標の達成に向けてまい進する。だが現実は厳しい。半透明とは二律背反的な「あるべき姿」に苛まされる自身の体感だろう。今日もまた、専業主婦のママ達の妙にすっきりした微笑を、羨望と嘲りをもって吹っ切り急ぐのだ。

堀合昇平

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