二三川練 2019.02.28
メロンパンの袋をあけるいつもとは違うあけ方でとても綺麗に 2019.02.25
人権の数だけチョコレートをあげる 君と君と君には空港をあげる 2019.02.20
やがて折れる塔のごとくに積まれゆく日々にかすかな鶺鴒の声 2019.02.15
知っていた未来ばかりが訪れてたとえば黄身がふたつの卵 2019.02.12
人の住む島に墓標は咲きわたり遠のく風は波としたしむ 2019.02.07
雪の日をクレヨンで描く 戦争のない日みたいに真っ白な紙 2019.02.04
あかい津波しろい津波と押し寄せてやさしく洗われる墓石たち 2019.01.23
腕の傷ふいにひらけば蟋蟀のふたご這いでて翅をかわかす 2019.01.18
喉をもつ空が洩らした嬌声のねえさん、星をもう蹴らないで 2019.01.15
篝火よ あなたに焼かれ不死となる身に現世の鍵をやどして 2019.01.10
霧雨に洗わせている血の眼 薬のように言葉を吐くな 2019.01.07
熱傷をはだかの腕にひからせてあなたがひらく犬の肋骨 2019.01.02
遠い国の水の味など語りつつ創生以前のおうし座の笑み 2018.12.28
松葉杖で木星を歩く ここでしか吹けない君のろうそくがある 2018.12.25
似た身体して僕たちはうすぐらい真水の底へ摩擦しながら 2018.12.20
心さえ無かったならば閉園のしずかに錆びてゆく観覧車 2018.12.17
森林を最後に見たのはいつだった 家を焼くなら夜が綺麗だ 2018.12.12
見わたす限りの明るいニュース 人生の前半戦で死ぬ守護天使 2018.12.07
うつくしい島とほろびた島それをつなぐ白くて小さいカヌー 2018.12.05
ふみがわ・れん
日本大学大学院芸術学研究科博士後期課程芸術専攻在籍。研究対象は寺山修司の俳句と短歌。象短歌会、俳諧無心、詩会クレプスカに所属。練くん連句の会主催。
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