鈴木美紀子 2017.06.08
幾たびもあなたの頰を拭ってた泣いているのはわたしなのにね 2017.06.05
自販機に〈なまぬるい〉のボタン見つけたらわたしはきっと次の
二人用の柩はないと知ったときあなたに少しやさしくなれる 2017.05.26
わたしたち、と言いかけたあと別々の通貨のようなことばを使う 2017.05.23
車いす押して海辺を歩きたい記憶喪失のあなたを乗せて 2017.05.18
あわてなくても海は逃げないよってわらってる誰かの眠りの中のわたしは 2017.05.15
わたしが、と思わず胸にあてた手がピンマイクを打ち爆音となる 2017.05.10
うすうすは感じていたはずシャンプーとコンディショナーの減り方の差を 2017.05.02
ほんとうはあなたは無呼吸症候群おしえないまま隣でねむる 2017.04.27
私を何でお知りになりましたか? ①ブログで②口コミで③真夜の悲鳴で 2017.04.24
5歳までピアノを習っていましたとあなたの指に打ち明けるゆび 2017.04.19
あなたさえそれでいいなら…と手離したザイルが今も風に揺れてる 2017.04.14
容疑者にかぶされているブルゾンの色違いならたぶん、持ってる 2017.04.11
前髪の分け目をひだりに変えました今度はあなたがひざまずく番 2017.04.06
折り返し電話するよと言うけれどそのときはもう虹は消えてる 2017.04.03
ハンガーに綿のブラウス羽織らせて今日のわたしのアンダースタディ 2017.03.29
透きとおる回転扉の三秒の個室にわたしを誘ってください 2017.03.24
この辺は海だったんだというように思いだしてねわたしのことを 2017.03.21
間違って降りてしまった駅だから改札できみが待ってる気がする 2017.03.16
すずき・みきこ / 東京在住。
2009年の春から新聞歌壇等へ投稿を始める。同年の秋、未来短歌会に入会。加藤治郎に師事。2010年雑誌「ダ・ヴィンチ」の「短歌ください」に投稿を始める。2015年に同人誌「まろにゑ」に参加。
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