中家菜津子 2015.08.07
君のうで半島としてつかむとき指のすきまに風はうまれる 2015.08.05
雪虫が頰にふれてる 抱きあってただ抱きあって死んでゆきたい 2015.08.03
夕立にシフォンブラウス透きとおり乳房のためのあたらしい皮膚 2015.07.30
たまかぎる夕べの砂場ままごとの箸はいつしか小枝にかえる 2015.07.28
デネブ発アルビレオ行 ポケットの胡桃で二枚切符を買った 2015.07.24
いつまでも生えてこなくて憧れるエジャキュレーション 銀河のような 2015.07.22
むこうから誰かが歩いてきたけれどいないみたいにすれちがうこと 2015.07.16
いもうとが息をはくたび粉雪は少し遠くへゆきさきかえる 2015.07.14
Metallic lyric脚を君のためきっかり二時の角度にひらく 2015.07.10
君までのきょりわるじかん、それははやさ。ひかりの帯となりゆく列車 2015.07.08
はじまりとおわりはわたしが決めること檸檬は荷から床にころがる 2015.07.06
みもざ、みもざ 歌ってほしい耳もとで雨粒よりも小さな声で 2015.07.02
うずく、まるわたしはあらゆるまるになる月のひかりの信号機前 2015.06.30
なぜだろう無意味なものほど愛しくて座席をひとつ移る夕暮れ 2015.06.26
はるじおん はるじおん はるじおんの字は咲き乱れ、銃声がなる 2015.06.24
モノクロのアネモネきっとあなたならうすむらさきを選んで写した 2015.06.22
花の雨 眠るわたしのこめかみにふれているのはくちびるですか 2015.06.18
何もない一日 雲を泡立てて貝殻模様のカップを洗う 2015.06.16
なかいえ・なつこ
1975年 東京生まれ
18年間北海道で過ごす
現在さいたま市在住
2012年 未来短歌会入会、加藤治郎に師事
2013年 詩歌トライアスロン最優秀作品「うずく、まる」
2013年 第24回歌壇賞候補作「沃野の風」
2014年 第25回歌壇賞候補作「霜の花」
ラインナップ