堀田季何 2015.10.23
のびて来て物乞の手のひらきたり生命線のゆたけき長さ 2015.10.22
火の国のほむらいろなすさくらにく箸にはさまばけむりと消えむ 2015.10.21
ヘブライとユダとユダヤとイスラエルおぼろげながら
いささかの余情をもちて珈琲の
大写しの歌手の虫歯に見入りつつ何故にかなしゑ秋の居酒屋 2015.10.16
チェロの音が暗緑色の蛇となり吾が神経とからみあふとき 2015.10.15
蛇と遇ひおのが心中視らるるを
斬新といふ言葉あり上下なる
人間である不安即人間でなくなる不安。レモネード旨し 2015.10.09
万年筆のあをきインキの底をつく刹那のかすれいやうつくしき 2015.10.08
その月と同心円の君なれば蝕の光のやはらかきかな 2015.10.07
トリスタンのごとく犬死するもよし
点滴はわが寝ねし間も青き血を薄めてやまずすみれの色に 2015.10.02
決潰の目玉をすする食卓に秋のひかりは
眩しきは
ともかくも吐きまた吐いて母を呼ぶ秋の朝風まだ吹かぬうち 2015.09.29
ぬばたまの黒酢酢豚を切り分けて闇さらに濃く一家団欒 2015.09.28
疵口の癒着のごとき繋がりをたもちて母と道歩くなり 2015.09.25
ほった・きか
1975年12月、東京本郷生れ。国際的な環境に育つ。十代半ばに作歌開始、二十代半ばに帰国、中部短歌会に入会、春日井建に師事。石川啄木賞、中部短歌会新人賞。「短歌」同人。
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