田中ましろ 2013.11.30
屋上へ向かう階段ゆくような軽さよ きみのかばんが弾む 2013.11.27
勝つことも負けることもなくシーソーは揺れる真夏の木馬のそばに 2013.11.24
信号に進めと言われ歩きだす(ピッポー)せかいのルール(ピッポー) 2013.11.21
八月の蛇口すべてが空をむき神様さえも撃ちぬくように 2013.11.18
なんにでも醤油をかける恋人の「おまえだけだ」を聞きながす夏 2013.11.15
飲み切ったあとに生まれる暗闇をこぼさぬように缶をもつひと 2013.11.12
低い椅子に腰掛け思いだす恋はかすかに土の匂いがしてた 2013.11.09
生きるとは何を残すかではないと父は言う 何も残さないと言う 2013.11.06
病棟の冬枯れているところから父へと届く風のあること 2013.11.03
死を待つのではなく死へと進むのだ 花は花瓶でなお咲くように 2013.10.31
麻薬おしえて麻薬ほんとうの痛みを隠した人にかける言葉を 2013.10.26
いおうええあえいああいと舌の無い口に背中を押されて帰路は 2013.10.23
冬の日と気付かずに咲く花のようおはようと手をひらきあっても 2013.10.20
ストライク投げても受け止めないくせにミットかまえて「恋」なんて言う 2013.10.17
ひとすじの雨になりたいまっすぐにあなたに落ちていくためだけの 2013.10.15
ほんとうのこと(今日世界で死に果てた羽虫の総数など)を知りたい 2013.10.15
春の日に手を振っている向かい合うことは誰かに背を向けること 2013.10.15
夜ひとつください 雨を散りばめてそこにあなたを落としてあそぶ 2013.10.15
待つことは待たせることか海までの坂にだれかの蜜柑は朽ちて 2013.10.15
たなか・ましろ
1980年生まれ。大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻修了。コピーライター、CMプランナー。2009年、短歌を始める。「夜はぷちぷちケータイ短歌」への投稿や、「短歌サミット2009」、「名短」など短歌イベントの企画・運営協力を経て、2010年、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」を創刊。短歌を広める活動に力を入れている。2012年、連作『告げられる冬』で短歌研究新人賞候補作に。2013年、「短歌男子」企画・制作。「かばん」所属。
うたらば:http://www.utalover.com/
ラインナップ