田丸まひる 2014.11.18
アマリリスぬるい台詞にひたされて聴覚は今きらきらわめく 2014.11.13
完璧なエア・コントロール口論にあかるい言葉ばかりあふれて 2014.11.10
昨晩の熱を覚えている耳に聴診器からうつす心音 2014.11.05
晩年にひたしたような顔をして錆びた車輪にふれているひと 2014.10.30
冷凍庫にもたれるときの安堵ほどでいいから今日も脱がさずにして 2014.10.27
じゃあ非常階段に来て。眼裏の雪のすべてが燃えきるまでに 2014.10.22
燃やしてはいけないものが多すぎる 小指、肋骨、かしこい額 2014.10.17
夏めいているのに薄いこおり踏むように謝罪の言葉を返す 2014.10.14
寒雷の夜に切る爪 からだから遠ざかるものすべてを悼む 2014.10.08
索引のページに指をさし入れて会話を少しずらすこいびと 2014.10.03
やわらかな睫毛がゆれる思春期の恋のはじまりカルテに記す 2014.09.30
ときどきは誰のものでもない夜の季節外れの夏の香水 2014.09.25
魔法瓶にスープ作っておいたから もうあなたしかいらない夜明け 2014.09.19
けれどまた笑ってほしい今朝虹が出ていたことを告げる回診 2014.09.16
ひだまりのにおいの秘密聞かされるときゆるやかに上がる体温 2014.09.11
氷砂糖ひとつぶ舌にとけるまでは聞くねあかるい未来の話 2014.09.11
桃色の炭酸水を頭からかぶって死んだような初恋 2014.09.11
こいびとのひとりひとりを街路樹に縛りつけたら燃えるのですか 2014.09.11
スカートの奥の夕陽を裏返すような行為をうまくできない 2014.09.09
たまる・まひる
1983年、徳島県生まれ。
2004年、第一歌集『晴れのち神様』(歌葉)上梓。
2011年、未来短歌会入会。
2012年、未来賞受賞。
2014年より「七曜」同人。
短歌ユニット「ぺんぎんぱんつ」としても活動中。
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