小学生だった頃の夏の記憶。真夏の日差しの下でたくさん駆け回り、家に戻って「喉が渇いた」とかあさんにせがむと出してくれたのは、メローイエロー。
ガラスのコップに飲み物が注がれると、シトラスのかおりが立ち上り、しゅわわとはじける炭酸の泡の音に包まれる。グラスにおでこをくっつけるようにして眺めていると、たちまち少女の目の前に夢の王国が広がる。少女はうっとりと空想に耽る。現実世界のかなしみから解き放たれる自分だけの場所を、少女は持っていた。大人になった今でもメローイエローのパッケージを見ると、そのときの夢の世界がよみがえる。淡いレモンの香とともに。
少女時代の世界が再現される、うつくしい一首であると思う。
天道なお