竹内亮 2015.05.28
段ボールが運び出されて空っぽの部屋の隅までひかり差し込む 2015.05.25
水色のジャージで歩く女子たちのみな丸顔になっている国 2015.05.20
網棚にテニスボールが静止する車窓の河川敷のざわめき 2015.05.15
線香を両手でソフトクリームのように握って砂利道を行く 2015.05.12
夏の海タルト・タタンの向こう側まなざし君の手の上で揺れ 2015.05.07
疾走する黒白猫が飛び込んだ噴火口的洗濯槽は 2015.04.28
海沿いにサーフボードは並べられ墓標のように音もなく立つ 2015.04.23
夏の午後に君の瞳のコンタクトレンズの縁の薄さ見つめる 2015.04.20
一本のフライドポテト落ちていた電車で白い紙片を開く 2015.04.15
花の下を歩いたときのなぞなぞの答えを君は今も言わない 2015.04.10
生まれつき善き人のよう色白の額に降った雨は弾かれ 2015.04.07
雲が白い夏の初めの風の朝きみ柔らかな瞼を開く 2015.04.02
クローゼット等間隔に吊された薄い衣服が息吹き返す 2015.03.30
真夜中の気温0度の星空に光しずかな一人の帰宅 2015.03.25
キャベツ色のスカートの人立ち止まり風の匂いの飲み物選ぶ 2015.03.20
川べりに止めた個人タクシーのサイドミラーに映る青空 2015.03.17
旧市街を何も話さず歩きたい足音のよい道を選んで 2015.03.12
春の風を摑んで海を渡るとき鳥の瞳は紺色になる 2015.03.09
終電の一駅ごとに目を開けてまた眠りゆく黒髪静か 2015.03.05
たけうち・りょう
1973年、茨城県生まれ。1997年、東京大学文学部日本語日本文学(国語学)専修課程卒業。朝日新聞社校閲部等勤務を経て、2007年、東京大学法科大学院修了。弁護士。2011年、東直子講座で短歌を始める。
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