戸田響子 2019.07.14
とりあえずで買った百円均一の食器のままで町になじんだ 2019.07.11
エレベーターが地上におりてチンというさびしいさびしいと衣ずれの音 2019.07.08
次々と刻印されし缶詰の賞味期限が戦地へ向かう 2019.07.05
この家は変な音がする何気なく見上げた屋根裏から山伏 2019.07.02
殺した虫をティッシュに包み屑かごへ捨てたらちょっと薄暗くなる 2019.06.29
「かっぽうぎ」っていってみて「っぽ」っていう時の顔すごいすてき 2019.06.26
空調の音さざ波に変わりゆく寝不足の午後の図書館は海 2019.06.23
弁当の緑のビラビラとりはずす世界はひとつの弁当になる 2019.06.20
アルコール消毒液を手に受ける小さなくしゃみのようなささやき 2019.06.17
ビン・カンと並ぶゴミ箱遠くからなんだか澄んだ音がしている 2019.06.14
定食屋のしょうゆの瓶を握ったら見知らぬ人との握手のようで 2019.06.11
おだやかな動物のように「しゃっませー」とひと鳴きし去る店員の背中 2019.06.08
思い通りにならないようだと思ったが一応三分ぐらいはごねる 2019.06.05
もう一度考えさせてくださいとチラシの裏に書いた円形 2019.06.02
どこからか飛んで来たゴム頰を打つ誰もわたしも何も言わない 2019.05.30
エレベーターの隙間の闇が見あげててまたぎ越すとき何かきこえた 2019.05.27
身ひとつでできることなど少なくて全速力で逃げた犬追う 2019.05.24
人間の記憶はあいまいリカちゃんのお尻はきちんと割れてましたか 2019.05.21
早朝のバスタブ朝日がつき刺さり音階のようなものが聞こえる 2019.05.18
とだ・きょうこ
1981年愛知県名古屋市生まれ
未來短歌会彗星集・歌人集団かばんの会に所属
詩形融合作品「煮汁」で第4回詩歌トライアスロン受賞
「拾いながらゆく」で第60回短歌研究新人賞次席
ラインナップ