木下龍也 2013.07.24
空を買うついでに海も買いました水平線は手に入らない 2013.07.19
あの羽は飾りなんだよ重力は天使に関与できないからね 2013.07.16
飛び上がり自殺をきっとするだろう人に翼を与えたならば 2013.07.11
一本の道をゆくとき風は割れ僕の背中で元に戻った 2013.07.08
日だまりのベンチで僕らさくら散る軌道を予測していましたね 2013.07.03
針に糸通せぬ父もメトロでは目を閉じたまま東京を縫う 2013.06.28
右利きに矯正されたその右で母の遺骨を拾う日が来る 2013.06.25
疑問符のような形をした祖母がバックミラーで手を振っている 2013.06.20
いくつもの手に撫でられて少年はようやく父の死を理解する 2013.06.17
風に背を向けて煙草に火をつける僕の身体はたまに役立つ 2013.06.12
雑踏の中でゆっくりしゃがみこみほどけた蝶を生き返らせる 2013.06.07
自転車に空気を入れる精密な自分の影に涙しながら 2013.06.04
B型の不足を叫ぶ青年が血のいれものとして僕を見る 2013.05.30
たくさんの孤独が海を眺めてた等間隔に並ぶ空き缶 2013.05.27
夕暮れのゼブラゾーンをビートルズみたいに歩くたったひとりで 2013.05.22
ハンカチを落としましたよああこれは僕が鬼だということですか 2013.05.22
自販機のひかりまみれのカゲロウが喉の渇きを癒せずにいる 2013.05.22
鮭の死を米で包んでまたさらに海苔で包んだあれが食べたい 2013.05.22
カードキー忘れて水を買いに出て僕は世界に閉じ込められる 2013.05.22
きのした たつや / 1988年1月12日、山口県生まれ。山口県在住。
2011年より作歌を始め、穂村弘「短歌ください」(ダ・ヴィンチ)や短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」などに投稿を始める。2012年第41回全国短歌大会大会賞受賞。結成当日解散型不定形ユニット「何らかの歌詠みたち」で岡野大嗣らとともに短歌朗読をたまにしている。しいたけと生魚と自己紹介が苦手。
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