九螺ささら 2018.10.31
なにぬねので出来ている眠りの世界は生まれたてのわたしが眠ってる 2018.10.30
舌を出す内気な彼女舌先がイモリみたいで両生類めく 2018.10.19
曲は川、クレッシェンドとデクレッシェンドのあいだを鮭が遡上している 2018.10.16
ルーシーに「忍者っているの?」と聞かれ「少なくなった」と答えるわたし 2018.10.05
ふつふつと冬虫夏草が脱皮する命を懸けて告白をする 2018.10.02
前世では
ばらばらなわたしはきみと目が合うたび縫い合わされシーツになってく 2018.09.21
鬱病を乗り越え復職した同僚幾何学模様のネクタイをして 2018.09.18
「世界観が世界を造っているのです、世界が世界観を、ではなくて」 2018.09.12
真ん中に蓮の花一つ咲いている宇宙とまったく同じ大きさの 2018.09.07
スリッパはいつも
視力検査を待つ列が街をはみ出して街の外が視覚化されてゆく 2018.08.30
「あそこにはえいえんの日曜があって迷子案内所は満員」 2018.08.27
球根に水のみ吸ってクロッカスおんがくに似た形に開く 2018.08.22
降りつづくショパンのピアノ梅雨入りの彼は半月音信不通 2018.08.17
「ハープとはゆめのほとり鳥の化身です」余命二ヶ月の館長は言う 2018.08.09
おとといの夢をはみ出た白鳥座がパンタグラフになり火花散る 2018.08.08
くら・ささら / 神奈川県生まれ。
青山学院大学文学部英米文学科卒業。
2009年春より独学で短歌を作り始める。2010年、短歌研究新人賞次席。2014年より新聞歌壇への投稿を始める。2018年6月に初の著書『神様の住所』(朝日出版社)を上梓。
座右の銘は「できるようになる唯一の方法は始めること」
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